反ユダヤ主義を克服できなかったユダヤ人国家イスラエル(パレスチナとイスラエルの戦争に関する時事解説)

はじめに 2023年10月7日、パレスチナ武装勢力の攻撃により、イスラエルとパレスチナの武力衝突が始まりました。真に残念ながら双方に多数の死傷者が出ており、これ以上の犠牲者が出る前に、双方が早期に戦闘を終えることを強く望みます。 本稿は、なぜ西アジ…

【2021年再掲】近代日本に於ける思想と文学の社会性の起源についての考察――人生相渉論争を基準にした思想と文藝の存在意義について――

以下は、2013年に友人のラッコ君(twitterID: @rakkoannex)の『概念迷路』という雑誌に寄稿した「近代日本に於ける思想と文学の社会性の起源についての考察――人生相渉論争を基準にした思想と文藝の存在意義について――」の再掲となります。 「近代日本に於け…

「近代日本に於ける思想と文学の社会性の起源についての考察」再掲に当たっての弁明

2013年に友人のラッコ君(twitterID: @rakkoannex)、に「根源」というテーマで何か書いてくれと言われ、『概念迷路』という雑誌に「近代日本に於ける思想と文学の社会性の起源についての考察――人生相渉論争を基準にした思想と文藝の存在意義について――」と…

アンドレ・レスール/小倉正史『アナキズムの美学――破壊と構築:絶えざる美の奔流』現代企画室、1994年10月25日初版第1刷。

19世紀から20世紀後半までのアナキスト革命家やアナキズムに関係のある芸術家の芸術思想史を追い、アナキズム美学思想史を論じた書となっている。ただし原著が1973年なので、「俺は反キリストでアナキストだ」と歌ったセックス・ピストルズのロンドン・パン…

【読書録】韓国アナキストの伝記から見える現代韓国の日本観:国民文化研究所、草場里見訳『韓国独立運動家鴎波白貞基――あるアナーキストの生涯』明石書店、2014年1月31日初版第1刷発行。

日本統治時代の韓国のアナキスト、白貞基の伝記。無国家の社会を目指すアナキストを、植民地支配からの国民国家の独立を目指す「独立運動家」と呼ぶのは正しくない気もするが、刊行した韓国の国民文化研究所は金九らと並ぶ大韓民国の独立指導者の一人と認識…

ナロードニキとしての国学者?:【読書録】伊東多三郎『草莽の国学(増補版)』名著出版〈名著選書2〉、1982年3月25日発行。

伊東多三郎『草莽の国学(増補版)』名著出版〈名著選書2〉、1982年3月25日発行。 1945年1月に原著が刊行された本の増補版復刊。「草莽の国学とは、庶民の国学の意味である。庶民生活に弘まった国学、之である」(本書1頁より引用)という書き出しから始まる…

【読書録】外川継男訳『バクーニン著作集3――鞭のゲルマン帝国と社会革命』白水社、1973年12月20日発行。

“……万人に逆らって発言したり、行動するためには、大きな、まじめな信念に裏打ちされていなければならない。だがエゴイストや破廉恥な人間や卑怯者には、この勇気はない。” (「神と国家I」本書218頁より引用) 本書にはバクーニンの『鞭のゲルマン帝国と社…

【読書録】D・アプター、J・ジョル編/大沢正道、江川允通、見市雅俊訳『現代のアナキズム』河出書房新社、1973年5月15日初版発行。

【再掲】D・アプター、J・ジョル編/大沢正道、江川允通、見市雅俊訳『現代のアナキズム』河出書房新社、1973年5月15日初版発行。 1939年のスペイン革命の挫折の後、1968年の世界的な若者の反乱を契機にして復活した世界各国のアナキズム運動についての論文…

【感想】『ペルソナ2 罪――Innocent Sin』、ATLUS、1999年6月24日(PS版)、2011年4月14日(PSP版)

いやー、やっとクリアしました。『ペルソナ2 罪』。今年の秋にふと、『罪』の続編の『ペルソナ2 罰』で、現職の外務大臣が進める陰謀に立ち向かう社会人のRPG主人公達の活躍を改めて見てみたいと思い立ち、いや、それならまず前編の『罪』からだ、ということ…

【読書録】ギリェルモ・モロン・モンテロ/ラテン・アメリカ協会訳『ベネズエラ史概説』ラテン・アメリカ協会、1993年6月28日発行。

ギリェルモ・モロン・モンテロ/ラテン・アメリカ協会訳『ベネズエラ史概説』ラテン・アメリカ協会、1993年6月28日発行を読了したものの、Amazonにもブクログにも登録されていない本なので、このブログにて感想を書くことにする。 本書は1926年生まれのベネ…

【読書録】猪木正道、勝田吉太郎編『世界の名著42――プルードン バクーニン クロポトキン』中央公論社、1967年11月20日初版発行。

猪木正道、勝田吉太郎編『世界の名著42――プルードン バクーニン クロポトキン』中央公論社、1967年11月20日初版発行。 近代アナキズムの主導者の作品を集めたアンソロジー。編集に当たった猪木正道氏、勝田吉太郎氏は共に保守派の学者だが、猪木正道氏が1930…

【読書録】勝田吉太郎『人類の知的遺産49――バクーニン』講談社、1979年12月10日第1刷発行。

勝田吉太郎『人類の知的遺産49――バクーニン』講談社、1979年12月10日第1刷発行。 保守派の思想史家によるバクーニンの研究書。1968年に白井厚氏がウドコックの『アナキズム』(原著1962年)を翻訳刊行した際には、まだ日本にはバクーニンの専門の研究書は存…

【読書録】ジョージ・ウドコック/白井厚訳『アナキズムII――運動篇』紀伊國屋書店、1968年7月31日第1刷発行。

【読書録】ジョージ・ウドコック/白井厚訳『アナキズムII――運動篇』紀伊國屋書店、1968年7月31日第1刷発行。 同著者の思想篇に続く運動篇の書。アナキスト・インターナショナル、フランス、イタリア、スペイン、ロシア、その他諸国のアナキズム運動史につい…

【読書録】ジョージ・ウドコック/白井厚訳『アナキズムI――思想篇』紀伊國屋書店、1968年6月29日第1刷発行。

ジョージ・ウドコック/白井厚訳『アナキズムI――思想篇』紀伊國屋書店、1968年6月29日第1刷発行。 原著は1962年。カナダ出身のイギリスの思想史家による近代アナキズム思想と運動双方の通史。 本書刊行の1968年の時点において、訳者の白井厚氏は日本のアナキ…

【読書録】勝田吉太郎『アナーキスト――ロシヤ革命の先駆』筑摩書房〈グリーンベルト・シリーズ85〉、1966年11月30日初版第1刷発行。

勝田吉太郎『アナーキスト――ロシヤ革命の先駆』筑摩書房〈グリーンベルト・シリーズ85〉、1966年11月30日初版第1刷発行。 保守派の思想史家によるアナキズム史。ロシアを中心に、近代アナキズムの誕生からロシア革命後に、ライバルだったマルクス主義に敗れ…

黒色社会民主主義に向けて:【読書録】渡辺孝次『時計職人とマルクス――第一インターナショナルにおける連合主義と集権主義』同文館、東京、1994年12月19日初版発行。

渡辺孝次『時計職人とマルクス――第一インターナショナルにおける連合主義と集権主義』同文館、東京、1994年12月19日初版発行。 19世紀スイスの労働運動の研究者による、第一インターナショナルにおけるスイスの時計職人の役割を明らかにした書。あとがきによ…

読書録:松田道雄『日本知識人の思想』筑摩書房〈筑摩叢書44〉、1965年7月25日発行。

討幕革命から安保闘争までの日本の知識人・インテリゲンチアに関する論考集。以前斜め読みしたものを今回改めてしっかり読むことにした。私がロシア語のинтеллигенцияのカタカナ表記を「インテリゲンチャ」でも「インテリゲンツィア」でもなく、「インテリゲ…

トゥハチェフスキー粛清事件に見られる民衆のスターリン支持について――クロンシュタット叛乱を偲ぶ

「赤いナポレオン」こと、ソ連赤軍元帥ミハイル・トゥハチェフスキーが1937年6月にスターリンに粛清(処刑)された際に、当時の日本の左翼文学者たちはこの事件を以下のように捉えたとのことである。 “ 昭和十年代の初頭において、左翼的あるいは同伴者的知…

中原中也――「不幸になれ」と言われた時

中原中也の友であった大岡昇平は、中也について死後こう振り返っている。 “我々は二十歳の頃東京で識り合った文学上の友達であった。我々はもっぱら未来をいかに生き、いかに書くかを論じていた。そして最後に私が彼に反いたのは、彼が私に自分と同じように…

チリ・クーデター45周年に際して:アジェンデは生きている

45年前の今日、1973年9月11日に南米南部のチリ共和国にて軍事クーデターが発生した。本稿ではこのクーデターについて多くを述べることは避けるが、代議制民主主義の要件を全て満たした上で大統領となり、「マルクス主義の古典によって予見されてはいるが、こ…

自己批判

中学2年生から3年生の時、インターネット上の極右言動に影響されて、左派系市民団体の方の個人サイトの掲示板に罵詈雑言を連ねたり、2ちゃんねるのハングル板で在日韓国朝鮮人の方々に対し、差別用語を使ってヘイトスピーチを行っていたことがある。ltu今思…

日本古典文化の不継承と民衆の戦争責任について

“これまで日本の左翼全体に支配的であったのは、一方に戦争の被害者としての民衆があり、他方に被害者から委託をうけて加害者を追求する正義の味方としての左翼陣営があるという代行制の構図であった。既成左翼の形骸化や平和宣伝のマンネリ化の主因はこの代…

twitterのアカウントを消してわかったこと

昨年から今年にかけての私は、twitterに依存しすぎだったので、自分からtwitterを取り除いたら何が残るのかを見定めるために4週間、アカウントを削除して過ごす実験を行った。 結局、わかったことは簡単なことで、自分はやはり今のこの日常生活を飛び出して…

『serial experiments lain』を観終えた

道すがら散りかふ花を雪とみてやすらふごとにこの日暮らしつ (金槐和歌集65) 風が吹く。雲が流れる。永遠に続くかのような夕暮れ時の中、まるで雪の如くに桜が舞い落ちる。 今日は半年ぶりにジョギングをしてきた。根っから体力がない人間なので、1.5kmほ…

またしばらくtwitterから消えます

ようやく年始から計画していた花見を無事に終えられました。良い機会なのでまたしばらくtwitterから消えます。例によって一月ほどで戻ってくるので、またその時は相手してくれたら嬉しいです。 以下、理由を記しておきます。 第一に、今に限ったことではない…

太宰治、高村光太郎、神山茂夫:76年前の日米開戦の日の涙を振り返って

今日、2017年12月8日は1941年12月8日の日米開戦から、実に76年目である。あの日本海軍の攻撃機によって星条旗が破れ、巨艦が沈んだ12月8日の朝から、一人の人間が一生を終えられるほどの時間が経ってしまった。今日は少し、このことについて振り返ることにし…

東京タワーから続いてく道

昨日、東京タワーに登ってきた。銀座から歩いて約25分。御成門駅の近くで間近に333mの赤く光る鉄塔が見えてきた時、思わず映画『横道世之介』の高良健吾のように飛び跳ねてしまった。高さ250mの特別展望台は工事中だったので、150mの大展望台へ。夜景を観て…

エキタスの「上げろ最低賃金デモ」についての雑感

本日、4月15日(土)、エキタスが主催する「上げろ最低賃金デモ」に参加するので、参加に当たって思ったことを少しだけまとめてみました。 なお、私自身はエキタスの一員でも、その他の政党、政治団体、社会運動体などの構成要因でもないため、以下述べるこ…

書評:橋本伸也、沢山美果子〔編〕『保護と遺棄の子ども史』昭和堂、京都、2014年6月20日初版第1刷発行。

昨年のクリスマス期間にtwitterでAmazonのウィッシュリストを公開したところ、なんとF氏より *橋本伸也、沢山美果子〔編〕『保護と遺棄の子ども史』昭和堂、京都、2014年6月20日初版第1刷発行。 と *田澤佳子『俳句とスペインの詩人たち:マチャード、ヒメネ…

第一回現代詩朗読会「病人としての宮澤賢治――誰にだって言いたくないことはある」レジュメ

概要 著名な文化人から文科省、学校の先生、ヒッピーまで、今日宮澤賢治を称えない人は存在しないのではないかと思われるような立場の詩人、宮澤賢治。多くの人は農業の聖者、エコロジーの元祖としての賢治を語るが、賢治はそこに収まらない悲哀を抱き続けた…